西武式ATS対応路線を作ろう

メトロ総合プラグイン

西武式ATS

対応路線を作ろう!

 bve4およびbve5環境下において、メトロ総合プラグインを用いた場合の、西武式ATSの路線データ側の組立てについて説明します。
 前提としては、西武式ATSの基本動作を理解していることが必須となります。

bve4/5 両対応


◆ 地上子の様相について

 西武式ATSでは、地上設備と列車間の情報授受に軌道回路、およびループ回路を用いています。そのため国鉄式ATS-Sのような物理的な地上子は存在しません。
 下記説明の 「地上子」 という表現は、あくまでもbve4/5の構文の上での地上子と解釈してください。


◆ 地上子インデックス割当て

地上子インデックス (ATS関連)
西武式ATS関連 備考
1
2
4
5
8
20

B1
B2
現示上昇時追従
誤通過防止
任意速度照査
最高照査速度95km/h超






許容は 115、制限は 0



◆ 速度照査パターン地上子 (自動閉塞信号機の場合)

 西武式ATSは、R〜Gの5種類全ての現示に対して、それぞれ照査パターンを発生させる「連続制御方式」です。信号機の現示が上昇した際には、それらに追従して自動的に照査パターンが更新されます。
 なお、YGでの照査が行われるのは、最高速度が90km/hを超える線区のみです。

 地上子は信号機の現示数に関係なく、以下のように配置してゆきます。参照するセクション(.Beaconの3つ目のパラメタ)は、基本としては 1 になります。

・信号機の230m手前にB1地上子
・信号機の440m手前にB2地上子 (最高速度が90km/hを超える線区のみ)

自動閉塞信号機の場合


◆ 速度照査パターン地上子 (閉塞区間が短い線区の場合)

 閉塞区間が短い線区の場合には必要な情報の授受をB1地上子のみで行い、B2地上子は配置されません。ところがbveでは仕様上、一つの地上子で複数の信号機の現示情報を受け取ることができません。

 これの対処として、同一地点にB1とB2の二つの地上子を重ねて配置します。このケースでは、B2地上子の参照するセクションは 2 になります。また、地上子を配置する際には、必ずB2を先に記述します。
 下の作例では、1345m地点のB2地上子は2000m地点の第2閉塞信号機の現示を受け取っています。

 筆者の勉強不足で、この 「閉塞区間が短い線区」 が具体的にどの区間を指すのかは不明確です。状況から勘案するに、例えば西武池袋線では、石神井公園駅以東がこれに該当するのではないかと思います。

 これは自動閉塞信号機の場合だけでなく、場内や出発信号機でも同様です。

閉塞区間が短い線区の場合


◆ 速度照査パターン地上子 (場内・出発信号機の場合)

 場内および出発信号機の場合は、より精度の高い在線検知を行っているため過走余裕が小さくなっています。具体的な地上子配置は以下のようになります。

・信号機の206m手前にB1地上子
・信号機の436m手前にB2地上子 (最高速度が90km/hを超える線区のみ)

 なお、閉塞区間が短い線区では上記のように、一つ手前の信号機のB1地点にB2を重ねて配置する形になります。

場内・出発信号機の場合


◆ 現示上昇時に追従させる地上子

 実際の西武式ATSでは、軌道回路に信号情報を常時重畳させていますから、信号現示が変化したときには直ちに列車側へ伝達されます。
 しかし、bveでは先方の信号機の現示情報をリアルタイムに受信することができません。この対処として4番地上子を置いて情報を受取ることにします。
 参照するセクションは 1 になります。

 4番地上子の配置箇所と配置数ですが、より多く置いた方が挙動はリアルになります。ただし、ほとんど制限信号に引っかからないような箇所に多数配置することは有用ではないため、このような箇所では信号機の少し手前に一つ置くとよいでしょう。
 なお、B1地上子も現示上昇への追従をします。

現示上昇時に追従させる地上子

 待避駅の前後など、制限信号に引っかかりやすい箇所では、4番地上子を多数配置する必要があります。最低でも25m間隔程度は必要ではないでしょうか。
 これに関しては実際に先行列車を設定してシミュレートし、あるべき形を詰めてゆくことになります。

現示上昇時に追従させる地上子

 また、bveでは駅ジャンプ機能があるため、低い照査パターンを保持したまま他の駅へジャンプしてしまうと、次の地上子を踏むまでパターンが更新されない事態が起こり得ます。
 この対策として、各駅の所定停止位置の6m先に4番地上子を配置することを推奨します。列車の組成両数によって停止位置が複数ある場合は、それぞれの位置に配置します。

駅ジャンプ対策の追従地上子


◆ 最高速度が90km/hを超える場合

 西武鉄道のG現示時における最高速度は、90km/hと110km/hの二種類があります。最高速度が90km/hを超えるのは本線系の見通しの良い区間に限られると思いますが、ATSでもこれらの両者を区別してそれぞれ照査パターンを発生させています。

 二種類の最高速度の区分はB2地上子によって行われています。bveでは制限を変更したいB2地上子の手前に20番地上子を置いて、任意数値部(.Beaconの4つ目のパラメタ)によって照査が95km/hを超えるか否かを宣言します。

 なお、115km/hから95km/hまでのパターン降下には121mを要します。

・任意数値 0 : 照査速度を 95km/h に制限
・任意数値115 : 照査速度の 95km/h 超を許容

最高速度が90km/hを超える場合


◆ 曲線など任意の制限に対する速度照査

 JR西日本会社の福知山線事故を受けて、曲線や分岐器などにおいても速度を照査できる機能が導入されました。西武式ATSでは複雑な仕組みを用いています。
 bveでは8番地上子を配置します。地上子構文の任意数値部に情報を入力し、速度照査パターンを組み立ててゆきます。

・任意数値 1 (FZL) : 115km/hからのパターン降下を開始
・任意数値 20〜105 (FZF) : この時点での照査速度を保持
・任意数値 0 (FZC) : 照査を解除

 下の作例では1000m地点でパターンの降下を開始、280m進行した1280m地点でパターンは60km/hまで下がってきました。FZFによって、以降はこの照査速度を保持しています。
 実際の速度制限はFZF点の45m先で55km/h制限となっていますので、照査の余裕は5km/hとなります。

 制限解除の方は、組成両数(例えば10両=200m)分だけ進行した地点に、FZCを配置することになります。組成両数が複数ある線区では、最も長い編成に合わせます。

曲線など任意の制限に対する速度照査

 この作例の場合、「280m進行した地点でパターンは60km/hまで下がった」と記載しましたが、速度と距離の対応は以下のようになります。

速度と距離の対応表

※ 注意
  bveでは駅ジャンプ機能があるため、速度照査情報を保持したまま他の駅へジャンプすると誤動作の原因となってしまいます。
  この対処として、最初の駅のStop構文の手前にFZC(.beacon 8;0;0;0)を配置する必要があります。


◆ 誤通過防止装置

 本来は停車すべき駅を誤って通過してしまう事故を防ぐために、誤通過防止装置が設けられています。bveでは5番地上子を、停車すべき駅の所定停止位置の584m手前に配置します。
 なお、組成両数が複数ある線区では、最も長い編成に合わせて配置します。

 ※ この機能は列車種別設定器とは連動していません。路線データごとにそれぞれ配置する必要があります。これは種別表示を持たない車両では対応できなくなってしまうためです。

誤通過防止装置 (本線系)



2012.07.28 新規掲載

 

メトロ総合プラグイン